井上雄彦AOZ日記 2
第2クォーター5分過ぎ。韓国チームのいい流れが続き、彼らのリードが8点と広がったところで巨漢のエース⑦キム・ドンヒョンの咆哮がコートに響いた。
日本にとって韓国代表が格下だったのはもはや過去の話。4年前の韓国で行われたロンドンパラ予選での死闘で日本は薄氷の勝利を得たが、苦い負けを味わった韓国は、日本との力の差はもはやないという確信を得た。事実、その後の韓国は日本に3連勝してこのAOZを迎えている。勢いは韓国にあった――。
しかし日本に動じる様子はない。やるべきことを確かめながら、自分たちの絵を着々と描き進めているような印象を受ける。
22-27の5点ビハインドで後半へ。
日本の大黒柱藤本がよりゴールに近いところでシュートできるようになってきた。日本のディフェンスは相手の得点源に楽なシュートを打たせない。
真綿で首をしめるようにジワジワと韓国チームの自由を奪っていく。及川HCは昂ぶる様子をまるで見せない。韓国のほとんどのポゼッションは24秒ヴァイオレーションギリギリの望まぬ形のシュートで終わっている。
最終4クォーター、韓国チームは手詰まり化。前半に見せていた余裕の表情はどこにもない。 日本チームが描いてきた絵がいよいよ完成の時を迎えた。
55対48。後半のスコアは日本が33、韓国が21。
対韓国戦の連敗は止まった。リオパラリンピック出場へ、一歩近づいた。
勝利以上に大きいのは、難敵韓国相手にリードされても慌てず騒がず、自分たち自身を信じ続けて、狙いどおりの試合を遂行したことだ。
日本代表は新たな次元に入ったと感じた。
井上雄彦
10/11/2015